簡単!防音アイディアBOOK ネット版
はじめに
自宅に個人スタジオを作る音楽家が増えています。これは、昔なら個人では手が出なかった高価な機材が、非常にリーズナブルになり、お金を出してスタジオを借りるなら、自分でスタジオを作ってしまおう!と考える人が増えたからだと思います。音楽関係に限らず、最近は防音工事をされる方が増えているようです。しかし、防音に関する書籍は非常に少なく、しかも、無理して防音関連の書籍を買ってもその難解な専門用語やデータなどで、読む気持ちさえもなくなってしまいます。
かつて、僕もその一人でした。個人スタジオを夢見るバンドマンだったのです。
本書は、僕が十年以上携わってきた防音工事の現場で得た知識と実績、年間二千件も寄せられる防音相談などを紹介し、これから防音を考えている方々のお手伝いができればと、
なるべく専門用語やデータに頼らず、ご紹介してあります。中には専門家から間違いを指摘されるような表現や構造もあるかもしれません。正直な話し、防音工事を始めた当初は失敗もありました。何度も工事をやり直しした現場もありました。そんな経験から得た材料の見極め方や、独自の構造を取り上げています。ですので、専門的に掘り下げた知識をお求めの方には、物足りない内容かもしれません。僕は、あくまでも「個人スタジオを夢見ている」人がこの書籍で一歩でもその夢に近づいていただけるように!近隣で発生する生活音で困っている方々の少しでも希望になれるように!そう願ってどんな方でもわかりやすいように解説させていただいたつもりです。
僕が店長を勤める「防音工房サイト」では、毎日防音相談を受け付けておりますので、そちらも是非ご利用ください。
一話 夢の個人スタジオを手に入れよう!
音楽を仕事にしている人はもちろん、趣味で楽器を弾く人にとっても自宅に個人スタジオを持つことは一つの夢ですよね!時間を気にせず、人に迷惑をかけることもなく、好きな時に好きなだけ練習ができる!こんな理想の部屋があったらどんなに楽しいでしょうか。
でも、実際は「文句を言われない程度の音量で」「遠慮しながら」練習していたりしますよね・・・これじゃ楽しいはずの音楽も、窮屈です。ただ、最近は事情が変わってきているようです。昔は高額で手もでなかった機材が、かなりリーズナブルな金額で手に入り、しかもインターネットの普及で、安くて良いものがオークションで買えたりします。
そこで現実的に必要になってくるのが「個人スタジオ」なわけです。防音工事は昔から比べるとかなり安くなってきたとは言え、坪単価五十万円、六十万円は当たり前です。
もっと安く防音工事はできないだろうか?
かつてバンドマンだった僕は、いつもそんな事を考えていました。「誰にも遠慮なく音楽ができる、自分だけのスタジオを安く手に入れたい」という思いは、社会人になってからも捨てきれず、とうとう防音関係の会社を興すまでとなったのです。
まずは、防音材の知識を勉強し、どんな材料が良くて、どんな材料が悪いのかを知りました。幸いにも父の紹介で防音材の仕入れ先も確保しました。いざ防音材の卸販売を始め工務店や建築会社を営業回りしてみると、まったく売れません。その頃の常識として「防音工事は防音材を使っても、音は止められない」と言われていました。施主様よりクレームを受けて引き渡しが危うくなるよりは、防音工事には関わらない方が得策という会社が非常に多かったのです。それはハウスメーカーも同じでした。どうしてもお客様の要望でピアノルームなどを作る際は、何度も何度も念を押すように「完全な防音は絶対に無理ですから」と事前にお客様に了承していただいたり、過去に痛い目にあった工務店では、契約書の中に「防音工事完了後、音が漏れても責任は持てません」というような文面まで付け加える会社もあったそうです。建築関係者にとって有難くない「特殊工事」だったようです。
そこで、僕は防音材が売れなかったという事もあり、それから現場の大工さんから「おたくのとこで、施工もすれば売れんじゃないの」といわれたこともあり、思い切って防音材と施工もワンセットで引き受けますということで、改めて営業回りをしました。すると少しずつ現場の仕事が入るようになり、他に同じような会社が地元になかったこともあって、いつの間にか県内のほとんどのハウスメーカーの防音工事を、頼まれるようになりました。まったく広告も宣伝もしていないにもかかわらず、次から次へと工事の依頼が舞い込んでくるようになりました。カラオケボックスや雀荘、工場騒音に至るまで、初めての経験でかなり無茶な現場もありましたが、毎回毎回の現場が勉強の連続でした。
工事を受注するにあたって、内装業者を知人に紹介していただきました。僕よりも若い内装会社の神原社長に一から建築の事を教わりながら、一緒に防音工事を勉強していきました。いろんな防音材を試したり、構造を組み替えたりしながら、毎日が試行錯誤の繰り返しでした。しかし、夢の個人スタジオが完成した時のお客様の喜んでいただいた表情を見ると、こちらまで嬉しくなった事を覚えています。
お客様に喜んでいただけた理由には、非常に安いコストで工事を請け負った事も大きかったと思います。僕の会社で受注した防音工事では、工務店に防音材を卸売りする価格にかなり近い金額で、提供させていただきました。しかも、防音材は平米単価にはせず、本数での見積もりをさせていただきました。つまり、どんな材料をどれだけ使用するか、お客様に一目瞭然だったわけです。その上で、防音材に対する施工費用を一平米あたり幾らという書き方にして提出したのです。
だんだんと需要は多岐に渡り、音楽関係だけでなく、パチンコ屋さんからスナックやクラブ、ライブハウスに貸しスタジオなどなど、音に関わる現場は次々と僕の会社に問い合わせが入りました。
いつしか僕は、地元建築関係者の防音相談役となっていました。
その頃から一般住宅における「生活音」での防音相談も入るようになりました。
さまざまな防音工事の現場で経験した実績を、これからできるだけわかりやすく、ご紹介、ご説明していきたいと思います。
ここでお断りしておかなくてはなりませんが、僕は防音材に関して勉強したり、防音工事の現場に携わってきましたが、音響工学の博士号を持っているわけでもなく、サントリーホールのような何億円もかかるようなコンサートホールの工事もしたことがありません。
個人や、町の工場、ライブハウス、スタジオなど、多くの防音工事のほとんどがパーソナル的な防音でした。ですから、工事の前に音の測定をし、透過損失を割り出し、残響計算や反響計算などしたことがありません。(もちろん工事に必要な音の測定などは簡易測定器で測り、ある程度の透過損失を割り出しますが、専門家には頼んだことが無いという意味です)その筋の専門家に一度見積もりを依頼しましたら、三日間の音響測定などで、百五十万円以上の見積もりになりました!今はもっと安いのかもしれませんが、三日あれば、そして百五十万円もあれば六畳程度のピアノルームは完成してしまいます!いくら数字をお客様に提示しても、最終的な判断は数字ではなく、お客様の耳です。
僕の書くこの本では、いかに高額な防音工事を安く手に入れるか!を基本コンセプトにしております事を、再確認させていただきます。
第二話 防音工事を安くする!
高額だと言われる防音工事にとって、そのコストの最大の理由は防音材の値段にあると思います。防音材以外で使用される材料はほとんどが通常内装工事で使用されるものと同じだと考えていいでしょう。石膏ボードや軽量鉄骨などは一般的に使用される内装材です。内部構造が多少複雑にはなりますが、使用される材料で一般的に使用されない材料は防音材だけです。
簡単な話、この防音材が安く手に入れば防音工事の価格はぐーんと安くなります。
先ほど、僕の会社で提出する見積もりの話をしましたが、通常の建築見積もりは平米単価、あるいは坪単価で出てきますね。電機や設備などは別として、見積もりの中に石膏ボードが何枚使用、軽量鉄骨45ミリを何本使用・・・なんて書かれている見積書にはあまり出くわしません。
建築工事のほとんどの項目で、平米単価表示は当たり前です。そしてそれは悪いものではありませんし、その方が便利なわけですが、防音工事など「特殊工事」と言われる工事に関しては、ここに大きなトリックが隠されている場合があります。
例えば、当社の運営する防音グッズサイト「防音工房」では、高性能な遮音材ばかりを取り扱っておりますが、その中の7,500円の商品、これは税込、送料込みでこの価格ですので、大変お得です。この商品の定価は15,500円です。これを平米単価に換算しますと1本が4・7平米分ありますので、約3,300円となります。これが7,500円で手に入ると平米単価は1,560円と半値になってしまいます!
ちょっとややこしくなってきましたか?それではもっとわかりやすくご説明いたします。壁の面積が47平米あるとします。先ほどの商品が4・7平米分貼れるシートタイプの遮音材ですから、47平米の壁に必要な本数は10本ですね。当社の見積書には「使用遮音材 47平米分 10本 75,000円」「遮音材施工費 47平米 37,600円
1平米あたり800円」と明記されます。遮音材が何本使用されて、それに対する施工費用が幾らか簡単にわかっていただけますよね?
これが通常の見積もり平米単価で書かれると「遮音工事 47平米分 211,500円/1平米あたり4,500円」となっていたりします。「えぇ! 1平米あたり4,500円!定価以上じゃないか!」と思われますよね。平米単価になりますと当然施工費用、時には経費まで乗っかってる場合があるのです。そうなると遮音材が幾らで、施工費が幾らかなんてもうわかりませんね。これを私は「特殊工事における平米単価マジック」と呼んでいます。しかし、これは違法なわけでも、悪い事でもないのです。本当にこれが普通ですし、そこに疑問を抱かれるお客様はほとんどいません。最終的な総額から「値引き」してもらって、それで納得ハンコをポン!とついて契約成立!です。
でも、どうせなら「いいものを安く!」手に入れたほうがお得ですよね。
結論!防音工事を安くするためには、防音材を安く買う!
これです。
しかし、ここに重要な落とし穴があります。いくら安く遮音材を手に入れても、その材料が粗悪品だったら?
音は止まりませんよね?最悪の事態になってしまいます。いわゆる「安かろう、悪かろう」状態です。1本2,000円前後の遮音材を大量に購入して施工し、出来上がってみたら音が思っていたよりも全然止まらない!なんて悲劇は日常茶飯事なんです。
防音工事における一番のコストがかかる部分が「防音材」なのですが、それはやはり防音工事の要となりますから、いいものを使わなくては意味がありません。「良い防音材を安く買う」ことこそが、防音工事を安くする方法なのです。
安い材料を使ったばっかりに、更に防音工事をしなくてはならない事態になった現場を数知れず、当社で施工してきました。
余談ですが、最近増えている工事依頼で、有名メーカーの組み立て式防音ルームを防音して欲しいという依頼があります。防音ルームを防音するなんて、冗談みたいに思えるでしょうけど、本当に増えているんです。そして、そんな現場でお客様に必ず聞かれる事があります。「この防音ブース、1からおたくで作ったら幾らになる?」と・・・
大抵僕は、「このブースはお幾らで購入されましたか?」と聞き返します。
お客様「200万円です。」
僕「では、その半額でこれよりも性能の良いブースを作ることが可能です」
お客様「え! ・・・最初からおたくで工事すれば良かったぁ〜」
こんなやりとりが、本当にあるんです。
そんな半額以下で同じものが作れるわけないだろう〜! とお思いの方もいらっしゃるでしょう。でも、先ほどの平米単価マジックを思い出して下さい。それができるのです。
防音材の中で、防音工事の要となるのが「遮音材」です。ネット上で市販されている遮音材の中には驚くような安価な遮音材が売られています。僕は恐ろしくて絶対に買えませんね。一口に遮音材と言っても様々なタイプのものがあります。昔はほとんど「鉛」を使っていましたが、最近はX線ルーム以外で使用することはあまりないようです。身体に有害なわけですから、当たり前ですよね。しかし、やはり鉛材は遮音性能は抜群で、これに取って代わったのが、当社でも扱っております「鉄粉タイプ」です。鉄粉タイプにもいくつか種類がありますが、それは後述します。他に石の粉を使用した遮音材、ゴムタイプ、塩ビタイプなどなど。明確な規定などがないのでどのタイプを使用しても「遮音材を使用した」事になります。極端な話、口の前をダンボール紙で遮ってみただけでも、音は遮断されますから、ダンボール紙だって遮音材と言えなくはないのです。
市販で2,000円ぐらいの遮音材でも定価は15,000円ぐらいと書かれています。大抵は石の粉タイプか塩ビタイプですね。1.2ミリの厚さがあるのに、1本10メートルロールで売っていたりします。このロールの長さも良い遮音材を見極める1つのポイントだと思います。
そもそもどんな遮音材が良くて、どんな遮音材が悪いのか?一言で言ってしまうと「重さ」です。比重ですね。重ければ重いほど良い遮音材となります。ですから、1・2ミリの厚さで10メートルロールで売られていても、「持てる重さ」だということは、比重はたいしたことはありません。ロールタイプ(シートタイプ)のもので1本が5メートルぐらいのものを選ぶといいと思います。別の言い方をすると、もう5メートルロールで切らないと誰も持てないぐらいの重さがあるタイプを選べば、間違いないでしょう。石の粉や塩ビが原料の場合、10メートルロールが多いようですね。鉄粉タイプは大抵5メートルです。鉄粉タイプでも鉄粉混入率というものが重要です。100%鉄粉であれば、これはもう普通に鉄板ですよね。お勧めは鉄粉混入率90%程度の遮音材です。見極め方は簡単。遮音材に「磁石がくっつくかどうか」です。
更に追求しますと、混入されている鉄粉の形も重要です。通常の鉄粉混入タイプで使用される鉄粉は、簡単に言いますとその原子が「丸型」です。丸型の鉄粉が混入されていますと原子同士の間にどうしても隙間ができてしまいます。平らな箱にパチンコ玉を敷き詰めるとパチンコ玉とパチンコ玉の間にどうしても隙間ができますよね。鉄粉混入率が90%を超える鉄粉の原子は「カギ型」「星型」と言ってもいいでしょう。お互いの原子が絡み合うようになりますので、隙間が非常に少なくなります。この鉄粉の原子の形が丸か星かの違いで大きな違いに変わってくるのです。鉄粉混入率が90%の遮音材が2,000円で買えるのであれば、僕が買い占めます(笑)2,000円で10メートルロールだとすると9・4平米分貼れるわけですから、平米単価が200円です!石膏ボードよりも安い!石膏ボードより遮音材が安く買えたら、防音工事はめちゃくちゃ安くできるはずですよね。
いかに遮音材選びが重要かご理解いただけたでしょうか。
まとめますと、防音工事を安くするためには
「良い遮音材を見極め、良い遮音材を安く手に入れる」ことで可能になります!